マネキン・什器の開発から空間デザインを手掛ける株式会社京屋が、2025年6月12日〜13日の2日間、新作発表の展示会を神田明神にておこないました。
展示会のタイトルを「京演」とし、創業97周年を迎える「京屋の歴史」「京屋の今」「京屋の未来」の3つの要素を、演目を体感するような構成で魅せました。
1928年に和装マネキンメーカーとしてはじまり、什器、ディスプレイ、内装設計と事業を拡大してきた京屋は、昨年、新たにイベントスペース事業も開始し、100周年に向けて進化を続けています。
職人技術と造形美の追求
京屋は、「原型師」「色彩師」といわれる職人たちの手によって、さまざまなマネキンを生み出してきました。展示の始まりは、今回新しく発表されたマネキン「Phiz(フィズ)」とともに、マネキンの制作過程と職人技が紹介されました。
京屋のマネキンは人体構造を把握した原型師たちによって、おおよそ1/6サイズのエスキースを制作します。その後等身大の原型をつくる工程に入ります。
原型の整形は入念な確認をおこない、この工程で何度も調整を重ね、時には企画から白紙になることもあります。
このように、人の手と目で造形美を追求したマネキンが、京屋の高い品質を維持してきました。
心身の逞しさを表現した「Phiz(フィズ)」
今回発表された3つのマネキンシリーズの1つ「Phiz(フィズ)」は、美しい筋肉ラインを表現したマネキンです。腕、脚、胸元から腹部の逞しい筋肉が特徴のマネキンですが、立ち姿も凛としており、芯の強さを感じさせます。
フィジカルだけではなくメンタルの強靭さも印象づけるマネキンです。
動きのあるポージングは、スポーツブランド、ストリートブランドなどにおすすめですが、立ちポーズもラインナップにあり、芯の強さを表現したいシーンで活用いただけるシリーズです。
コーディネートを自由に楽しめる「a.i(アイ)」
しなやかな女性のボディラインと、リラックスした表情が特徴的なマネキン「a.i(アイ)」は、様々なシューズを着用できるよう開発され、踵の高さは2段階で設計されています。スニーカーなどのフラットなシューズから、ハイヒール、サンダルなどの着用が可能です。
それに加えて、ウィッグ、カバンのコーディネート、アイウェア、ピアス、帽子の着装も可能です。ヤングカルチャーを意識し、よりファッションのコーディネートを自由に楽しむことができるマネキンです。
柔らかさを演出、新作什器「r series(アールシリーズ)」
今回発表した新型什器「r series」は、アルファベットの「r」の曲線をベースにした、柔らかい印象を与える什器シリーズです。このシリーズの什器はすべて、フレームの角を取り除き曲線にしています。ハンガーラックも全体的に曲線になっており、空間にゆるやかなリズムをつくるユニークさがあります。
天板も、丸やオーバルとなっているので、空間全体に柔らかさを演出します。
白いフレームを基調としていますが、ブラック、シルバーのフレームもご用意があります。天板もシロに加えて、ゴールドやマーブル調の展開もあり、お好みの組み合わせでご使用いただけます。
素材を変更するだけで、やわらかい印象からシックでモダンな什器に様代わりします。
京屋の新しい挑戦、3Dプリンターを活用した新作マネキン「和モダン」
今回の展示会でのクライマックスとなるクドキ(メインステージ)では、歌舞伎などの伝統芸能を踏襲し、日本の美意識を纏わせたマネキン「和モダン」を発表しました。
ダイナミックなポージング、表情、髪の毛、カラーなどビジュアルのユニークさが際立ちますが、このマネキンは、3Dプリンターを活用した新しいマネキンづくりへの挑戦が秘められています。
3Dプリンターによるマネキンづくりは、スピーディーな開発が可能になるだけでなく、よりきめ細かい表現を実現することができます。
このマネキンの凛々しい表情は、眉毛や瞳の造形をきめ細かくおこない、形成されたものです。また、一本一本の髪の毛の動きや流れも、従来のマネキンでは表現されてきませんでした。
これらは3Dプリンターによって、細部の造形が容易になったため、実現することができました。歴史ある京屋は、職人技術と最新技術をかけ合わせながら、新しい商品開発に挑戦しています。
展示会のタイトルともなっている「京演」や、4種類のポージングのテーマとなっている「粋・傾・雅・艶」は、書家の佐藤竹風(さとうちくふう)による揮毫です。最新技術を取り入れながらも、日本の美意識を大切にした京屋のレガシーを彩る演出となりました。
新たな素材を活用した什器
新しい試みは制作過程に留まりません。新しい素材を取り入れたサステナブルな什器制作もおこなっています。
ライザー什器の側面には、廃材となるフェルト素材や緩衝材のプチプチなどを使用した什器も発表しました。中にライトを設置することで、どこか日本の伝統を感じさせるような、ノスタルジック雰囲気を醸し出します。
素材は、古材などを用いた木材、衣料やペットボトルを再生した化繊剤、再生アクリル板などの樹脂材、鉄剤などの展開があります。
棚什器のkumi.kiの素材にもリサイクルボードや、OSBボードが使用されています。今回の展示会ではOSBボードが使用されました。
OSB(Oriented Strand Board)とは、間伐作業で伐採された間伐材を使用し、薄い削片状にした木片を接着剤と混ぜてつくられた強度の高いボードです。森林資源の有効活用にも繋がるサステナブルな素材です。
SHOP BUILDER(ショップビルダー)でも取り扱っている、kumi.ki、HACOなどの什器の素材に使われています。
京屋の新規事業、イベントスペースSAS®
今まで、クライアントの空間づくり、世界観を演出するマネキン・什器を開発してきた京屋は、昨年より新規事業としてイベントスペースの運営を開始しました。ブランドとお客様を結びつける機会の創出まで事業領域を広げています。
イベントスペースSAS®の概要
京屋原宿オフィスの地下一階は、シルバーを基調としたモダンなイベントスペースになっています。124.8㎡の広々とした空間は、ブランドのポップアップや、アーティストによるインスタレーションなどに適した空間です。
中央のカーテンによって2つの空間に分けることもできるので、複数ブランドの合同展示会などにもお使いいただけます。
スペースにはデフォルトで用意された什器もありますが、イベント内容に沿った内装プランの提案や什器レンタルも可能となっていり、京屋のアセットが備わった空間を運用しております。
オプションプラン
オプションプランとして、イベントの企画からプランニング、空間デザイン、施工、プロモーション動画を含むコンテンツ制作、プロモーション、販売まで一気通貫でのサポートも提供しております。
京屋は、ブランドとお客様を結びつける機会づくりまで事業領域を広げています。オンラインビジネスが主流となる中、デジタルでは伝わらないプロダクトの魅力、ブランドの世界観を体験する特別な経験を提供することを目指し、新しい試みをつづけています。
新しいディスプレイツールの展開
京屋がダイレクトに販売するプロダクトとして、テーブル、棚什器などの上に設置する店舗什器を開発しています。今回の展示会では、商品を魅力的に展示するディスプレイツール(プレート・ブロック)をリリースしました。
素材は十和田石、アクリル、アクリルミラー、ステンレス、ヒノキの5種類をご用意しております。ポップアップや店舗什器としてご使用いただくものですが、ご自宅でも小物を飾れるアイテムなので、一般向けにも販売をしております。
京屋が運営するECサイト、SHOP BUILDER PLUSにて販売しております。
今後も、To BからTo Cに向けて、VMDの視点をもった視点で商品開発を続けていく予定です。
最後に
京屋は、マネキン・什器の開発から空間デザインまで、数多くのクライアント様のサポートをさせていただいております。展示会の最後のセクションでは、ライトウォールに照らした実績のご紹介をさせていただきました。
テクノロジーとともに、人々の商習慣は変化し続け、ブランドとお客様をコネクトする手法は多様化していくことでしょう。
京屋は、”Shape the creation”という「創造をカタチにする」コアポリシーをもって、時代に合わせた、新たなシーンを生み出すことに挑戦し続けています。