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フランス老舗デパートの新店「ギャラリーラファイエット」の新しい試みとは!?

UPDATE: 2019.11.25

2019年3月にフランス老舗デパート”ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)”がパリ・シャンゼリゼ通りに新店をオープンしました。もとは1930年代に銀行として建てられたアール・デコ調の歴史ある建物です。2013年Virgin Megastoreが閉店し長年封鎖された状態で、構想に3年、内装に2年かけて新店をオープンしました。

内装デザインを手掛けたのはビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)です。2020年1月CESでトヨタが発表した静岡県の次世代都市「スマートシティ」のデザインを手掛けることでも話題になっているデンマークの建築家です。

ギャラリー・ラファイエットは近年フランス大手ECラ・ルドゥート(La Redoute)を買収し、EC事業に力を入れているようですが、地下を含め4フロアを使用した6500㎡の新店舗をオープンしたのは興味深いことです。

この記事では老舗デパートであるギャラリー・ラファイエットが、顧客体験向上を目指し行っている新しい試みについて、実際に店舗に訪れてレポートをしていきます。

 

美しい建物を利用した導線の設計

シャンゼリゼ通りにある正面入り口はトンネルのようなアーケードになっています。シャンゼリゼ通りのクラシックな雰囲気から近未来的なトンネルによって異世界に連れていかれるような高揚感があります。

 

中に入ると3階まで吹き抜けのアトリウムに出迎えられます。大きな大理石の柱と柱の間にはガラスのボックスが設けられています。一気にラグジュアリーな空間にワープします。

 

ダイナミックにポップアップを演出

このメインとなるスペースでは頻繁にブランドのポップアップが行われ、吹き抜けの広い空間を利用してダイナミックにブランドの世界観を表現しています。

 

この日はバットマンのポップアップが行われていました。中央にバットマンが移動で使う「バットモービル」が展示されています。店内のマネキンにバットマンのマスクを装飾したり、天井にはバットマンのシンボルをつけたり大々的にポップアップの空間演出を行なっています。バットモービルやマネキンと一緒に写真を撮る人の熱気が溢れている日でした。

 

通常はファッションブランドのポップアップが行われています。エントランスを抜けてすぐ、このホールがあるので、ポップアップを行っているブランドが建物全体の空気感を作り出します。ブランド認知に重点を置きたいブランドであればこちらでポップアップを行うのは有効そうです。

 

常に顧客をエンターテインする設計

エスカレーターに乗っても、階段を上がっても常にときめく演出がなされています。エスカレーターに乗っている間も売り場を覗ける設計になっており、常に顧客とブランド・商品の接点を作っているようです。

 

ラグジュアリーを引き立てている大階段からの眺めは美しく、上り下りしたくなる階段です。

 

2階にあるファンシーなカフェは3階からも入ることができ、ガラスの階段は天井のようになっています。照明が入った階段の下はこんなにも美しい空間になります。

 

機能的かつ映える(ばえる)ディスプレイ

2階で際立つ演出は、サングラスとスニーカーの見せ方です。どちらも商品ごと区分けされた巨大什器で展示されています。この什器自体が売り場のカテゴリー別の空間を美しく作るポイントになっていて、どこから見ても映える演出です。

 

映えているだけでなく、実際商品が見やすいという機能性がしっかり備わっています。比較購買の場であるデパートとして、デザイン性だけに偏らず商品の選びやすさも考えてディスプレイを選定しています。

 

またフロアごとにジェンダーを分けるのではなく、カテゴリーごとにフロアを分けているので、男女でショッピングに来ても一緒に見て廻れる楽しさがあります。

 

デジタルを取り入れたパーソナライズの強化

老舗デパートの新しい試みとして、1番印象的な施策がデジタルを活用したパーソナライズの強化です。それは無人化してAIに任せるというものではなく、ヒューマンリソースを最大限に活かすためにデジタルを活用するコンセプトが見てとれます。

 

300人ものパーソナルスタイリストを採用

Amazon GOなど極力無人化したスーパーの誕生がトレンドを作っている昨今ですが、ギャラリーラファイエットはパーソナライズの強化の一環で300人ものスタイリストを採用しています。そして採用はInstagramで人材を確保したとのことです。採用に関しても新しい試みです。

 

専用アプリで顧客をサポート

パーソナルスタイリストはそれぞれデバイスが支給され、”Personal Stylist 2.0”という専用アプリで顧客とチャットができるようになっています。顧客が足を運ぶ前から店内にいる間にコミュニケーションを取れるだけではなく、お店を出た後でも顧客と接点を持てるということです。

より顧客を満足させられるように、好みの把握や対面のアポイントを取る手段を採用しています。

 

スマートハンガーの活用

”スマートハンガー(Smart Hunger)”と呼ばれるデジタル化されたハンガーを採用しています。このハンガーでは商品のサイズ展開や値段を表記しているだけでなく、在庫のあるサイズまで把握ができます。在庫システムと連動したハンガーなのです。また、”GOボタン”を押すと試着室まで運んでくれる仕組みになっています。

本来店舗スタッフが行なっていた雑務を軽減し、スタイリストとしての業務に注力できる環境を整えているようです。ギャラリーラファイエットのスマートハンガー開発の過程の記事で、明確に記されています。

The main aim was to find ways of improving the client’s experience, while creating a special connection between sales assistants and customers. As a consequence, the smart hanger will become part of the shopping experience by providing useful information. This will also allow the sales assistants total on the role of personal stylists and spend more time counselling clients.

目的は、セールスアシスタントと顧客の間に特別な繋がりをつくりながら、顧客体験を向上させる方法を見つけることでした。結果的にスマートハンガーは有益な情報を提供し、購買体験の一部となりました。これはセールスアシスタントは顧客とのカウンセリングの時間をさくことができ、パーソナルスタイリストの役目を全うできることとなります。

引用元:Galeries Lafayette – Reinventing retail experience –

 

上記記事は英語になりますが、プロジェクトチームが100案以上持ち寄り、試行錯誤して進めていった過程が画像やスケッチで紹介されているのでデジタルデバイスに興味のある方はぜひご覧ください。

 

 

さいごに

近年AmazonやAlibabaなどのIT企業がニューリテールを提唱し、スーパーマーケットなど実店舗を有する小売業界に革命がおきています。ギャラリーラファイエットのようにフランス老舗企業も実店舗のあり方を再定義して従来のコンセプトを踏襲したり、新しい概念やシステムを取り入れたりしていることがわかりました。

顧客体験に重きを置いて、デジタルで行うこと、人力で行うこと、それぞれ挑戦している姿勢に注目です。

因みに、1階奥は多数の香水が並ぶエリアです。地下1階は食品フロアでイートインができるのでお酒や軽い食事を楽しむことができます。

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